うつ病のわたしからあなたへ 心レター

うつ病の療養から見えてきたこと、心の病を抱える方やご家族に役立つ情報をシェアしていきたいと思います。特に、精神疾患での労災について、詳しく説明します。

あいちトリエンナーレの件で思うこと

こんにちは。あやです。

今日は珍しく、うつ病や労災以外のことを書こうと思います。

 

先日、あいちトリエンナーレの「表現の不自由展」が中止になりました。

実はわたしは足かけ20年ほどアートに携わってきたので、

この一件について思うところがあります。

 

わたしの専門は舞台芸術なので、美術については一ファンでしかありませんが、

「表現の不自由展」中止については、いろいろと危機感を持ちました。

現場に身を置いているときから感じていましたが、

日本の芸術界はまだまだ未成熟だなと思います。

 

まずは、トリエンナーレの芸術監督が津田大介氏であること。

芸術監督というのは、芸術祭だけでなく、劇場にもあるシステムです。

芸術監督の仕事は、プログラムの芸術面を考え、責任を持つこと。

作品の選定や、芸術祭であれば、その年のコンセプトを作るのが仕事です。

そのような専門的なポジションに、アートの専門家でない人を就けてしまう。

これが、まずもって失敗の発端だと思います。

 

専門家以外の人を参加させて、多様な意見を取り入れるべきでは?と

思う方もいるかもしれません。

もちろん、芸術祭の委員の1人に他分野の方を入れるのは悪いことではありません。

しかし、芸術監督となると話は別です。

アートについての知識だけでなく、表現者としての実体験を持つ人でないと、

コンセプトに芯が通らず、今回のようなことを招いてしまいます。

 

津田氏はネットカルチャーには詳しいかもしれませんが、

アートが持つ力に関しては、全くの素人だと思います。

今回の展示作品の良し悪しはさておいても、

アート作品には、人の感情に訴える大きな力があります。

例えば、「戦争は反対だ。悲惨なものだ」と言葉で言うより、

戦争の悲惨さを描いた1枚の絵、1本の映画や演劇を見せる方が

圧倒的なインパクトを与えることができます。

 

津田氏は、アート作品にそこまでのインパクトがあることを知らず、

問題作として撤去された作品を集めて展示したら面白かろうというぐらいの

気持ちでいたのだと思います。

 

で、実際に展覧会が始まってみると、「何だこれは!」と

怒りを伴う非常に大きな反響があったわけです。

津田氏自身も「想定外の反響」と述べていました。

過去に問題作として撤去された作品を集めれば、

同じように問題視されて、抗議があるのは当然です。

芸術監督であれば、このような批判があるのは折り込み済みで、

これこれこういう理由で開催したと、展示会の意義を訴えねばなりません。

 

ところが、津田氏はそのような反論をすることはなく、

脅迫を受けたことを理由に、「表現の不自由展」を中止しました。

なんじゃ、そりゃ?というのが、わたしの正直な感想です。

素人が「問題作」に手を出せば、やけどするのは当然です。

津田氏の反応は素人そのものであり、芸術監督の名に値しません。

 

津田氏を芸術監督に任命した、あいちトリエンナーレの運営体制が

実は一番の問題なのです。

おそらく話題性を重視したのでしょうが、

芸術祭として重視すべきなのは話題性ではなく、

今の時代、今の日本に必要なアートとは何か?ということです。

それが芸術祭を開く意義であり、アートの公共性なのです。

 

今回の騒動を発端に、「このような表現に助成金という公金を使うのはどうか」という

批判が出てきています。

津田氏うんぬんより、こちらのほうがよほど大きな問題です。

政府のお金、自治体のお金を使うのだから、

政府や自治体の意向に沿わない作品は展示すべきではないと言われているわけです。

 

芸術祭に限らず、公立劇場も美術館、博物館なども

政府の助成金自治体の補助金で運営されています。

そこで上演される作品、展示される作品は、政府や自治体を批判してはならないと

言われるようになったら?ゾッとします。

 

あまり知られていませんが、戦前や戦時中は、

演劇が国民の戦意高揚のために一役買っていました。

勇ましい軍国主義的な作品を上演し、それを見た観客は

軍隊や国家の姿に感動し、政府の意向を肯定することになりました。

アートには、それだけの力があるのです。

 

今後、公金を使って芸術活動をする際は、

政府の批判はまかりならんという風潮ができてしまったら、

戦前、戦中に逆戻りです。

 

政府の意向に沿うコンセプトの作品が優れていれば、

それまで反政府の考えを持っていた人も感動して、

うっかり肯定派に回ってしまうかもしれません。

それは、とても恐ろしいことです。

 

助成金補助金は、もちろん使途は決められて当然ですが、

作品の内容にまで干渉してはいけないのです。

これは、表現の自由を守るために、絶対に必要な条件です。

 

あいちトリエンナーレの今回のお粗末な騒動で、

公金を使って反政府的な表現をするのはけしからんという

意見を引き出してしまったことは、非常に罪深いことです。

 

津田氏をはじめ、あいちトリエンナーレの運営関係者は、

このことをどうとらえているでしょうか?

おそらくわかっていないと思いますが、

本当に罪深いことをしてくれたものです。

 

公金と作品の内容は関係ない。

このブログを読んでくださっている方は、このことだけは

しっかり覚えておいてください。

アートに携わる人間として、心からお願いいたします。


うつ病ランキング